PPP
北欧/ヨーロッパのヴィンテージ家具
閑静な弘前の住宅街にある、板塀に囲まれた小さな日本家屋の目の前にガラス瓶が一本置かれており、そばには小さなサインがある。玄関に向かうと、引き戸には鍵がかかっており、呼び鈴を押すと、ほどなくして、2階で作業をしていたらしい店主が現れて、鍵を開けてくれた。
中に入ると、そこは昔病院だったようで、当時の受付がそのまま残してある。その中に、北欧やアメリカ、ドイツやオランダの家具が無造作に置かれている。無造作なようでいて、計算されつくしている気もするし、バラバラなようでいて、ひとつ筋の通った統一感がある気もする。
2階の和室に上がると、買い付けてきた雑貨や家具が床に置かれている。
回廊から見える緑あふれる中庭と、そこから差す光がヴィンテージのカラフルなガラスを通して、えも言えぬ美しさだった。
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それにしても、北欧家具と和室の相性がいいのはなんとなく知っていたけれどこんな風に、長年使い込まれた日本家屋の歴史ある風合いが加わると、ここまで唯一無二の雰囲気を出すものだとは。窓ガラスの飾り格子が、まるでモンドリアンのポスターのように、モダンな趣を醸している。
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後で調べると、この邸宅は「旧杉山醫院」といい、弘前市の「趣のある建物」にも指定されているそうだ。”明治期に建てられた母屋に、1945年(昭和20年)に増築された医院部分とともに、創業当時の姿がよく残されている建物である。”とのことである。
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店主の石田さんは、デンマーク近代家具の祖と呼ばれるコーア・クリントの父、P.V.イェンセン・クリントが、日本文化を徹底的に学んで大きな影響を受け、折り紙にをモチーフにしたプリーツシェードのライトを作った話、今と昔のBUNACOの経営戦略とものづくりの違いの話、などひとつのものの背景にあるストーリーをいろいろと話してくださる。
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青森に来てずっと感じていたこと、「青森は日本の北欧である」という自説を披露してみたところ、十和田サウナ (@towadasauna)代表の中野和香奈さんも、北の奥と書いて「北奥」(ほくおう)と読んでいるとのこと。
ちなみに最近、日本銀行青森市店長の吉田満さんが書かれた「青森賛歌」を読むと
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「青森は日本のノルウェーである」という一節があった。
”北は北極海、西はノルウェー海、南は北海と三方を海に囲まれた、漁業と森林の国ノルウェー”
”冬の間孤立する地域が多いため、方言のむずかしさはヨーロッパ一”
”素朴な国民性と、個性を大事に受け継いでゆく気風から、じみながら一級品の芸術が数多く生まれている”
“りっぱな工業国である”
どこかで聞いたことのある地域の話のようである。
こんな風に、北欧と青森との共通点を証明する話は枚挙にいとまがない。
PPPには、北欧だけでなく、オランダやドイツなど、世界各国から買い付けた家具が並ぶ。
北欧、ヨーロッパを中心としたダイニングテーブルやチェア、ソファー、照明やテーブルウェア、花瓶等の雑貨を扱っており、年代は1940-80年頃の物が多い。Niels.O.Moller、Borge Mogensen、Alvar Aalto、Pastoe/Cees Braakman、Dux/Sam Larssonの家具、Dieter Ramsのオーディオ、Florian Schulzの照明、Rosenthal、Kupittaan savi、DANSK、Arabia、Ittala、KOSTA BODA等のテーブルウェアやファブリック。特にTapio Wirkkalaで普段使い出来るアイテムが多々あるそうだ。
東京のMUJI HOTELで行われるMODERNISM SHOWにも毎年出展しているとのこと。
店主の石田さんは、機械系のエンジニアとして14年間勤めた後、脱サラして、長年の夢だった家具店を始めた。
このお店の特別な雰囲気は、この邸宅の持ち主、家具の作り手、譲り手、買い手、店主、たくさんの人の歴史が静かに幾重にも重なって感じられるからなのかもしれない。
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OTTABIO の三上未夢さんいわく、このお店の真髄は、家具を買う時だけでなく、メンテナンスの時に実感するのだそう。細部にまで神経のゆき届いたその技術に感動する、と。
店に入りきらない商品は倉庫に保管してあるとのこと。店舗から車で約15分の倉庫には400台程の国内外の家具が保管されている。
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文章でも写真でも1割くらいしか伝えられない気がするこの魅力は、ぜひ現地で味わってみてください。
スポット名 | PPP |
住所 |
〒036-8351 青森県弘前市百石町小路3
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営業時間 |
店舗 14:00-16:00 定休日 : 火曜日 ※倉庫を見られたい方はInstagramまでメッセージをお願いします |
公式サイト | PPP |